Wednesday, May 30, 2007

コンテンツ批評にむかって

2008年春、明治大学大学院理工学研究科では新しい専攻課程を開設する予定です。

「新領域創造専攻」は、安全学系、数理ビジネス系、ディジタルコンテンツ系の3系に分かれます。この最後のDC系が、ぼくが所属することになる新しい場。その場を使って、ディジタル空間の研究と批評をはじめます。

<ディジタル空間>は現実の空間には存在しないのに、現実の空間とのはざまから映像を、音楽を、文書を、送りこんできます。そしてわれわれの日常生活と、日々を周航してゆく意識は、そうしたディジタルな贈り物によって、どんどん変容をつづけています。

この専攻系には、ディジタルメディアに載って流通するあらゆるコンテンツの歴史と現状をよく理解し、それが社会と生活に与える力を批判的に検討し、いくつもの分野で新しい作品とそれをささえる技術をつくりだしていこうとする者たちが集うことになるでしょう。

DC系の専任教員は、倉石信乃(近現代美術史、写真史)、宮下芳明(ディジタルコンテンツ学)、管啓次郎(文化詩学と批評理論)の3人。倉石さんはもともと横浜美術館のベテラン学芸員、写真評論家であり、詩人。宮下さんは作曲家、映像作家、小説家にして工学博士。名実ともにこの分野の今後を担ってゆく人材です。そして管は過去20年あまり、翻訳をやりながら旅行や言語や書物をめぐるエッセーを書いてきました。

コンテンツ批評は、映像、画像、音楽、書物、ウェブサイト、ゲーム、デザインなど、あらゆるコンテンツを対象とします。コンテンツ批評は、ディジタルメディアの時代の文化研究(カルチュラル・スタディーズ)です。コンテンツ批評は、現代社会における<連結>のかたちを探り、また新たな連結をつくりだす、連結的人文学(コネクティヴ・ヒューマニティーズ)です。

ここでは、主に学生のみんなを対象として「こんな本がある」「こんな考え方がある」といった話題を、不定期で提供していこうと思います。

つまり、このウェブログ自体が、コネクティヴ・ヒューマニティーズの実践の場だというわけ。ここでしか見られない連結のパターンを、これから探っていくことにしましょう。

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