Thursday, May 31, 2007

Curiosity, Understanding, Friendship

ぼくはテレビをほとんど見ないので(こどものころからずっとそう)、テレビ文化を知らず、どんなテレビ番組があるかも知らない。でもときにはおもしろい番組があることを疑わないし、心に残る番組もいくつもある(もちろん)。

NHKのBSで「未来への提言」という番組がある(あった?)らしく、その内容が本になって出ているのを見つけ、読んでみた。きょう読んだのはアメリカの理論物理学者リサ・ランドールに宇宙飛行士の若田光一がインタビューした『異次元は存在する』(NHK出版)。ランドールが探究しているのは5次元世界で、彼女によるとわれわれが住む3次元宇宙は、5次元世界にある膜に貼りついたようなかたちで存在するにすぎないのだという。

異次元世界のイメージとしては、イギリス19世紀の数学者アボットが書いた小説『フラットランド』のイメージが有名だ。3次元世界のわれわれにイメージできるかたちで、2次元世界の住民たちのことを語っている。でも5次元は、われわれにはイメージできない。イメージできないからといって、その世界が存在しないとはいいきれないし、実際、そんな世界があると考えたほうが説明しやすい事象もある、そうだ。

たとえば自然界の4つの力「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の中で(それぞれがグラビトン、光子、ウィークボソン、グルーオンによって伝えられる)なぜ重力だけがひどく弱いのか。(ごく微弱な磁石でも重力にさからって金属、たとえばペーパークリップを吸い上げることができる。)それは重力自体が、5次元世界の時空のゆがみの中で、あるところでは強く、あるところではひどく弱く分布しているせいではないか。宇宙に存在する「重力だけが存在する」ダークマターの秘密も、それにかかわっているのではないか。

といわれてもぼくにはまるで理解できないが、ランドール博士があげる21世紀のキーワードには感心した。「探究心、理解力、友情」。「好奇心、理解すること、友情」と訳してもいいだろう。そして(英語教師としてのぼくは)改めて、英語の強さの秘密を思った。数学好きの少女がこんな風に育ってゆく環境があるのが、アメリカ社会だ。そこでの理論的探究とか(物理学用語のおもしろさ)、彼女のような女性科学者の生き方、闘いの軌跡が、ことばに刻まれてゆく。

宇宙飛行士の若田さんの経験もおもしろい。「地球上で目を閉じるときには、周りが見えなくても重力があるので、上下の方向が認識できます。しかし無重力状態でふわふわ浮きながら真っ暗な部屋で目を閉じてみると、体のどこにも接しているものがないので、自分はいったい、本当はどこにいるのだろうかという不思議な浮遊感を味わいました。まさに、たったひとりで暗黒の宇宙空間を漂っているようなイメージです。」

夜空は見上げることができる。でもその大部分は、何もわかっていない。目に見えないダークエネルギーやダークマターがたくさん存在する。それが5次元空間のしっぽみたいなものかもしれない。想像もつかないが(あたりまえ)、ひどくエクサイティングな気分にかられる。

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